神奈川県内から出土した勝坂式期の釣手土器と寒川町

神奈川県内から出土した勝坂式期(Ⅰ期)(*1)の釣手土器(初期の釣手土器)は少なくとも5個あります。

小田原市 久野一本松遺跡 1個
伊勢原市 御伊勢森遺跡 1個
寒川町 岡田遺跡 2個
藤沢市 西部221遺跡 1個
藤沢市西部221遺跡の釣手土器 (出典:藤沢市文化財調査報告書 9)

藤沢市西部221遺跡の釣手土器 (出典:藤沢市文化財調査報告書 9)


発見された場所(住居址、土壙)、発見された場所の造営時期、集落の規模は釣手土器に関係なく、概ね100棟以下に1個の割合で出土しています。
釣手土器の用途は不明ですが、祭祀に使われた可能性が高いと言われています。
一般に、Ⅱ期(*1)以降に造られた釣手土器が、勝坂式期(Ⅰ期)よりも多く発見されています。
(*2によれば、Ⅰ期58、Ⅱ期155、Ⅲ期172。)
一方、小田原市 久野一本松遺跡、伊勢原市 御伊勢森遺跡、藤沢市 西部221遺跡からⅡ期以降に造られた釣手土器が発見されていません。
これらの遺跡でⅡ期(縄文中期後葉)以降も釣手土器を使った祭祀が行われていたとしたら、勝坂式期(Ⅰ期)に造られた釣手土器が後世まで引き継がれたものと思われます。

[注釈・出典]

*1:「Ⅰ期、Ⅱ期」は*2の分類による。
Ⅰ期:藤内式期~曽利Ⅰ式期。
注:「勝坂式期」と「藤内式期~曽利Ⅰ式期」は若干ずれがある。ここでは両者を足した期間に制作された釣手土器を対象にする。
Ⅱ期:曽利Ⅱ式期
*2:中村耕作 2010.5 「加藤建設(株)史葉 第3号」「釣手土器の展開過程―造形の継承と変容―」

[参考]

●産業能率大学 1979.3.10「神奈川県伊勢原市 御伊勢森遺跡(傳上杉定正館址)の調査」
●小田原市教育委員会2002.3「小田原市文化財調査報告書 第101集 久野諏訪ノ原遺跡群Ⅰ―市道0036号線道路改良工事に伴う埋蔵文化財調査―」
●県営岡田団地内遺跡発掘調査団 1993.3.31「神奈川県高座郡寒川町 岡田遺跡発掘調査報告書」
●寒川町岡田遺跡発掘調査団 1999.11「高座郡寒川町 岡田遺跡」
●藤沢市教育委員会 1974.3.20「藤沢市文化財調査報告書 第9集」
●2017年11月4日~2018年3月31日「さむかわの縄文時代」展
https://samkajyoho.exblog.jp/26078849/
●釣手土器(吊手土器、香炉型土器) 展示 寒川町観光協会
https://samukawaguide.blogspot.com/2018/10/blog-post.html
●神奈川県内から出土した勝坂式期の釣手土器(PDF)
https://drive.google.com/open?id=197ADeucuKwX21R2JbsvdIps5xzoe0fBM